「まだ大丈夫」と言われた時、家族はどう向き合えばいい?

ー無理に説得しなくてもいい理由ー
「最近、聞こえにくそうだから、一度見てもらったら?」
そう声をかけた時に返ってくる言葉。
「まだ大丈夫や」
「そんなに困ってない」
「年のせいやから仕方ない」
このやり取りに、
心当たりのあるご家族はとても多いと思います。
そしてそのあと、
こんな気持ちが生まれていませんか?
「やっぱり言わなければよかったのかな」
「嫌なことを言ってしまったかも」
「どうしたら分かってもらえるんだろう」
ご家族としては、
心配だから声をかけた。
元気でいてほしいから伝えた。
それなのに、
拒まれたような気持ちになって、
胸が苦しくなる。
まず最初にお伝えしたいのは、
その声かけは、間違っていません。
「まだ大丈夫」と言われたからといって、
あなたの心配が的外れだったわけではありません。
目次
- ○ なぜ本人は「まだ大丈夫」と言うのか
- ・①本人は本当に「困っていない」ことが多い
- ・②「補聴器=年寄り」というイメージ
- ・③プライドや不安が入り混じっている
- ○ 「分かってもらえない」と感じた時の大切な視点
- ○ 目指すのは「使わせる」ことではありません
- ○ 「知るだけ」という選択肢があることを知ってほしい
- ○ 声をかける時の”言い換え”ヒント
- ○ 「メガネと補聴器の中尾」がご家族に伝えたいこと
- ○ 「まだ大丈夫」は、拒否ではありません
- ○ 家族の役割は「背中を押す」ことではなく「横に立つ」こと
なぜ本人は「まだ大丈夫」と言うのか
聞こえの相談を拒まれると、
つい「現実を受け入れたくないのでは?」
と思ってしまいがちです。
でも実際には、
もっと複雑な気持ちが隠れています。
①本人は本当に「困っていない」ことが多い
前々回のブログでも触れましたが、
聞こえの低下はとてもゆっくり進みます。
そのため、
聞こえにくい状態に”慣れてしまっている”ケースがほとんどです。
・聞き取れなかった部分を想像で補う
・分かったふりをする
・会話を選ぶ
こうして日常をやり過ごしていると、
本人の感覚としては
「特別困っていない」
「大丈夫」という認識になります。
②「補聴器=年寄り」というイメージ
昔の補聴器のイメージが、
今も強く残っている方は少なくありません。
「まだそこまでじゃない」
「補聴器を使うほどじゃない」
これは、
自分を守るための自然な反応でもあります。
③プライドや不安が入り混じっている
「聞こえにくい」と認めることは、
人によってはとても勇気のいることです。
・弱くなったと思われたくない
・家族に迷惑をかけたくない
・できなくなった自分を認めたくない
そうした気持ちが、
「まだ大丈夫」という言葉になって表れることもあります。
「分かってもらえない」と感じた時の大切な視点
ここで多くのご家族が、
こんな方向に気持ちを傾けてしまいます。
「このまま放っておいていいのかな」
「もっと強く言った方がいいのかな」
「無理にでも連れて行くべき?」
でも、
聞こえの相談において
無理な説得は逆効果になることが多いのです。
なぜなら、
「やらされている」「責められている」
と感じた瞬間に、
心のシャッターが下りてしまうから。
聞こえの問題は、
体だけでなく、心にも深く関わります。
だからこそ、
正論よりも
安心できる空気が大切なのです。
目指すのは「使わせる」ことではありません
ここで、一度立ち止まって考えてみてください。
本当の目的はなんでしょうか?
・補聴器を使わせること?
・病院や店に連れて行くこと?
実は、
そうではないはずです。
本当の目的は、
✔ 会話を楽にすること
✔ 毎日を安心して過ごしてもらうこと
✔ 家族の関係を守ること
補聴器は、
そのための”手段の一つ”にすぎません。
だから、
「使うか・使わないか」を
今すぐ決める必要はないのです。
「知るだけ」という選択肢があることを知ってほしい
当店がご家族にお伝えしているのは、
とてもシンプルなことです。
「まずは、今の聞こえを知るだけでいい」
・測定だけ
・話を聞くだけ
・説明を受けるだけ
それだけで、
状況が大きく変わることもあります。
実際に測ってみて、
「思ったより聞こえていた」
という結果になることもありますし、
「こんなに聞こえていなかったんだ」
と本人が初めて気づくこともあります。
どちらにしても、
判断材料が増えるという点で、
とても意味のある一歩です。
声をかける時の”言い換え”ヒント
「まだ大丈夫」と言われた後、
次に声をかけるなら、
こんな言い方がおすすめです。
✕「だから言ったやん」
✕「ほら、やっぱり聞こえてない」
ではなく、
〇「私もちゃんと伝えられてない気がして」
〇「一度、今の状態を一緒に聞いてみない?」
〇「使うかどうかは、その後で決めたらいいし」
ポイントは、
”あなたの問題”にしないこと。
「一緒に楽になるため」
という視点を共有することです。
「メガネと補聴器の中尾」がご家族に伝えたいこと
当店には、
「本人はまだその気じゃないんです」
と相談に来られるご家族もたくさんおられます。
そして多くの場合、
そのご家族はとても悩み、
とても優しい方です。
だから当店は、
無理にすすめることはしません。
聞こえを測ること
話を聞くこと
説明を受けること
その一つひとつを、
本人のペースで進めていきます。
「まだ大丈夫」は、拒否ではありません
「まだ大丈夫」という言葉は、
「一生使わない」という意味ではありません。
多くの場合、
「今はまだ心の準備ができていない。」
というサインです。
その準備が整うまで、
家族にできることはたくさんあります。
・責めない
・急かさない
・情報だけそっと渡す
それだけで、
次の一歩につながることがあります。
家族の役割は「背中を押す」ことではなく「横に立つ」こと
聞こえの問題に向き合う時、
家族は引っ張る役ではありません。
隣に立って、一緒に考える存在です。
もし今、
「どうしたらいいか分からない」
と感じているなら、
それはもう、
十分に向き合っている証拠です。
相談することは、
諦めることではありません。
大切に思っているからこその行動です。
